次世代照明用発光材料の開発

2012年11月30日超域学術院プロジェクト

年次報告書

 世界的な規制に基づく蛍光灯における水銀使用の制限は比較的に近い時期に実施される流れにあり、水銀を使用しない次世代照明用の蛍光体の開発は全世界における重要な課題となっている。本プロジェクトでは、実現性の高い次世代照明として白色LED、無機EL、長残光蛍光体およびキセノン放電ランプを候補とし、それぞれの照明において利用される実用蛍光体の開発を行う。これらの多様な励起光源に対して効率よく発光する蛍光体の開発には、これまで利用されてきた効率の良い蛍光体の転用といった小手先の従来技術改良型の研究では対応できない。
蛍光灯用およびブラウン管テレビのみに特化した時期における学術研究の衰退から、世界的な大企業においてさえ、従来型材料の高効率化や改良といった細分化された範囲のみにとどまっている。我々のグループではこれまで「エネルギー改変機能を装備する特異な結晶構造とはどういうものか」という観点から、多くの新規な蛍光体を開発してきた実績がある。従って、将来を見据えた抜本的な蛍光体の創出ができるのは世界的に見ても我々のグループだけであると自負している。そのため、本プロジェクトにより開発が促進されれば、新潟大学は蛍光体そして照明分野における世界的な研究拠点として先導的な役割を果たすことができる。
社会的な意義としては、新潟県は水銀汚染による第二水俣病の被害地でもあり、水銀を利用しない照明材料の開発は新潟大学で取り組むべき重要な課題である。本グループは、多くの蛍光体・化学メーカーのみならず、ディスプレイメーカーとも良好な関係を維持しながら、最先端の情報に基づき新規な蛍光体の開発を行ってきた。すでに、独自開発した新規な蛍光体材料に関する特許を大学所属特許として多数出願している。照明業界は大きなマーケット(2兆円)があり、研究プロジェクトが成功した際には、知的財産権を特定の企業に依存しない状態で、全世界で使用可能な材料として開発が可能になる。次世代照明用の蛍光体創出によって、単純な屋内照明のみならず、電気エネルギーを使わない夜間の照明、道路標識、建物内の非常灯、省エネディスプレイなどにも応用が期待され、社会に与えるインパクトは大きい。