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災害復興メカニズムの相違を規定する社会経済システムの多様性を解説(厳成男准教授)

2014年04月01日テニュアトラック事業研究成果

災害復興メカニズムの相違を規定する社会経済システムの多様性を解説

【本研究の概要】

 巨大地震、津波、および原発事故が重なった「3.11東日本大震災」からの復興は、災害の複合的・広域的な性格により、国全体をあげた長期的な取り組みが必要となっている。大型自然災害からの復旧・復興には、厖大な資源、資金、人力、および知恵が長期に渡って投入されることから、復興事業は被災地域の社会経済システムを大きく変化させる可能性がある。とりわけ、被災地域では産業構造、就労形態、および人々の生活様式の大転換が起きる可能性がある。
そして、このような復興事業には、中央政府、地方自治体、企業、研究機関、個人、NPOなどのさまざまなアクターが参加するが、諸アクターの役割、およびその集約としての復興メカニズムは、その国と時代における社会経済システムの調整様式と深く関わる(用語解説の表を参照)。すなわち、当該社会経済システムにおける被災前から存在したレギュラシオン様式が、復興を担う諸アクターの役割を規定し、地域社会のあり方を方向づけ、被災地域の社会経済システムの持続可能性に強い影響を与える。
例えば、3.11以降の日本におけるグローバルビジネスの利益を重視する「民間主導の創造型復興」と呼ばれる災害復興メカニズムは、「企業単位のコーディネーション」を主な調整パターンとしてきた日本型企業主義レギュラシオン の帰結であると言える。そして、2008年四川大地震における短期間での集中的な復興支援を通じて、3年間で復興事業を完了し、被災地域の発展を20年も前進させた「国家主導の成長型復興」と呼ばれる災害復興メカニズムは、「国家主導のコーディネーション」を主な調整パターンとする現代中国の社会経済システムの特徴を如実に表している(用語解説の表を参照)。
本研究では、2011年に発生した日本の「東日本大震災」と2008年に発生した中国の「四川大地震」からの復興メカニズムが、日本と中国における異なる社会経済調整様式に大きく規定されていることから、復興にかかわる諸アクターの役割も大きく異なっていることを明らかにする。そして、これらの二つの復興メカニズムを特徴づける分断的、経済的、および短期的という限界を超える新しい復興メカニズムとして、地域住民の主体的な参加と役割に基づく「地域主導の持続可能な発展型」災害復興メカニズムの姿を人間復興の視点から描いている。

(本研究成果は、福島大学国際災害復興学研究チーム編著『東日本大震災からの復旧・復興と国際比較』(八朔社、2014)の第9章(pp.161-178)にまとめられている)

【用語解説】

お問合わせ先

  • 新潟大学経済学部 准教授 厳成男(げんせいなん)
    Tel/Fax:025-262-6511