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ヒトのリン酸化シグナル伝達経路の進化を解明(奥田修二郎准教授)

2014年04月01日テニュアトラック事業研究成果

ヒトのリン酸化シグナル伝達経路の進化を解明

【本研究の概要】

 本学大学院医歯学総合研究科・バイオインフォーマティクス分野・奥田修二郎テニュアトラック准教授は、金沢医科大学・病理学I講座・吉崎尚良助教と共に、ヒトのリン酸化シグナル伝達経路の進化を解明しました。
本研究成果は『BMC Genomics』(2014年7月1日)に掲載されました。

 タンパク質リン酸化は、キナーゼにより触媒される反応で、細胞増殖や転写制御、細胞死、代謝など様々な生命機能を調節しています。また、がんを初めとする疾患などもリン酸化酵素の異常により起こることが知られており、リン酸化シグナル伝達経路は、ヒトの疾患にも大きな影響を持っています。近年、リン酸化プロテオミクス技術の発達から、膨大なタンパク質についてリン酸化される部位(リン酸化サイト)が明らかになりつつあります。しかし、同時にほとんど生理機能に関与しないリン酸化サイトの存在も明らかになっています。今回、膨大な数のリン酸化サイトの中から、生命機能に重要な役割を持つリン酸化サイトを抽出する方法を開発したことと、その解析から新たにいくつかの新規な知見を発見しました。 最初に、データベースに登録されている約3万のリン酸化サイトから、178個のリン酸化モチーフを決定しました。これらのモチーフを酵母からヒトまでの9生物種で、進化的な保存性を比較したところ、特定の生物種から保存性が急激に増加する16個のリン酸化モチーフを発見しました。線虫から出現するリン酸化モチーフは、すべてキナーゼの調節部位の配列と同じであることがわかりました。また、ショウジョウバエからのモチーフは、転写調節因子に多く含まれるZincFingerと呼ばれるモチーフの機能を調節することがわかりました。さらに、ゼブラフィッシュからのモチーフでは、選択的スプライシングに関係するリン酸化シグナルが、この時期に大きく発達していることがわかりました。酵母のような単細胞生物からずっと保存されている普遍的なシグナル伝達経路と比べて、これらの特定の生物種から保存性が急増するモチーフというのは、普遍的なシグナル伝達経路に直接相互作用して機能する付加的なネットワークを作っていることが判明しました。本研究の成果は、特徴的なリン酸化モチーフを迅速に発見する手法であり、様々な疾患に関わる新規のリン酸化モチーフの発見やそのシグナル伝達経路の解明に大きく貢献すると期待できます。

【用語解説】

  • リン酸化
    タンパク質にリン酸基を付加する反応のことで、主にキナーゼによって触媒されています。このリン酸基が付加される部位のことをリン酸化サイトと呼びます。
  • モチーフ
    ここで言うモチーフとは、タンパク質において、規則的な特徴が見られるアミノ酸配列のことを言います。
  • ZincFinger
    DNAに結合する特徴を有するタンパク質ドメインのファミリーの一種のこと。
  • 選択的スプライシング
    DNAから遺伝子配列が転写される時に、直接タンパク質のアミノ酸配列を決定しないイントロンと呼ばれる部分を除き、アミノ酸をコードするエキソン部分を結合してmRNAを作ることをスプライシングと言う。選択的スプライシングは、特定のエキソンを飛ばしてスプライシングが起きる現象のこと。

お問合わせ先

  • 新潟大学大学院医歯学総合研究科バイオインフォーマティクス分野
    テニュア・トラック准教授 奥田修二郎
    TEL/FAX:025-227-0390/0393