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無花粉スギの家系内識別を可能にする簡易PCRマーカーを開発(森口喜成助教)

2014年04月01日テニュアトラック事業研究成果

無花粉スギの家系内識別を可能にする簡易PCRマーカーを開発

【本研究の概要】

 本学大学院自然科学研究科・森口喜成テニュアトラック助教は、4つの交配家系を対象に雄性不稔遺伝子※1近傍の連鎖地図※2を作成し、無花粉スギ※3の家系内識別を可能にする簡易PCRマーカーを開発しました。本研究成果は、森林総合研究所、富山県森林研究所、新潟県森林研究所との共同研究によるものです。
本研究成果は『Tree Genetics & Genomes』Volme 10 Page 1069-1077に掲載されました。

 我が国の大きな社会問題の一つになっているスギ花粉症の対策として、花粉を生産しない無花粉スギの利用に向けた取組が各地で精力的に進められています。無花粉スギは雄花が着生しないと識別ができず、雄性不稔遺伝子をヘテロ接合体で保有する個体(種子生産に必要)は人工交配を行って子供を判定しなければ識別できないため、これらの選抜には膨大な労力と時間がかかります。遺伝的に多様な無花粉スギの効率的な種苗生産や育種年限の短縮のため、DNAによる簡便な判定法の開発が望まれています。

 これまでの研究の結果、雄性不稔遺伝子ms-1がスギ基盤連鎖地図の第9連鎖群に位置することがあきらかになっています(Moriguchi et al. 2012 1))。そのため、本研究では、スギ高密度連鎖地図の第9連鎖群に座乗するDNAマーカーを使用し、新たに4つの無花粉スギの交配家系についてms-1を含む領域の詳細な連鎖地図を作製しました。雄性不稔遺伝子ms-1近傍のDNAマーカーは家系ごとに異なりますが、近傍マーカーを用いることにより、これらの交配家系では約96%の精度で無花粉スギを識別することができました。これにより、無花粉スギの家系内識別を芽生えの段階で行うことが可能になりました。


1) Moriguchi Y, Ujino-Ihara T, Uchiyama K, Futamura N, Saito M, Ueno S, Matsumoto A, Tani N, Taira H, Shinohara K, Tsumura Y (2012) The construction of a high-density linkage map for identifying SNP markers that are tightly linked to a nuclear-recessive major gene for male sterility in Cryptomeria japonica D. Don. BMC Genomics: 13: 95 [(オンライン版):印刷物で13頁相当]

2) Moriguchi Y, Ueno S, Saito M, Higuchi Y, Miyajima D, Itoo S, Tsumura Y (2014) A simple allele-specific PCR marker for identifying male-sterile trees: Towards DNA marker-assisted selection in the Cryptomeria japonica breeding program. Tree Genetics & Genomes 10: 1069-1077.

【用語解説】

  • ※1 雄性不稔遺伝子
    無花粉スギの原因遺伝子。これまでに、4種類の雄性不稔遺伝子(ms-1~ms-4)が発見されています。
  • ※2 連鎖地図
    DNAマーカーの染色体上の順番や間隔をあらわす地図。スギの場合は、第1連鎖群~第11連鎖群までの11の連鎖群で構成されます。
  • ※3 無花粉スギ(雄性不稔スギ)
    無花粉スギは1993年に初めて富山県で発見されました。雄花の形態は正常な雄花と無花粉スギの間で違いはありませんが、正常な花粉や雄花の発達は起こらず、花粉を飛散させることはありません。無花粉スギは一対の核内劣性遺伝子(雄性不稔遺伝子)に支配されます。詳細は、「無花粉(雄性不稔)スギのデータベース」を参照して下さい。

お問合わせ先

  • 新潟大学大学院自然科学研究科
    助教 森口喜成
    TEL/FAX:025-262-6861
    ※森口喜成テニュア・トラック助教のプロフィールはこちらです。