無花粉スギの普及拡大に向けたDNAマーカー育種技術と効率的な苗木生産技術の開発(森口喜成准教授)
無花粉スギの普及拡大に向けたDNAマーカー育種技術と効率的な苗木生産技術の開発(森口 喜成 准教授)
【研究期間】
2016~2018年度(3年間)
【交付予定額】
150,000(千円)
【採択プログラム名】
平成28年度 農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業 発展融合ステージAタイプ
【研究の背景】
昭和39年に初めて報告されたスギ花粉症の罹患率は年々増加しており、現在では国民の4人に1人がスギ花粉症と言われている。このスギ花粉症による経済損失は年間5,963億円に上ると推計され、深刻な社会問題となっている。そのため、今後供給されるスギ苗は花粉を全く飛散させない無花粉スギであることが望ましい。当研究グループは、これまでに発見されたすべての無花粉スギの原因遺伝子(雄性不稔遺伝子: ms1, ms2, ms3, ms4)の連鎖地図上の位置を解明し、これらの雄性不稔遺伝子近傍の部分連鎖地図を構築した(Moriguchi et al. 2012, 2014a, 2014b)。
無花粉スギは平成24年から実生苗の普及が開始され、普及拡大が進められている。しかし、無花粉スギの育種母材が少ないこと、選抜に多大な時間と労力を要すること、生産苗の約半数の苗が花粉を飛散するため無花粉スギとして出荷できない(苗木生産効率が悪い)等が課題となっている。DNAマーカー育種(DNAマーカーを用いた選抜を利用した育種)技術は、林木育種に要する期間を大幅に短縮する手法として熱望されている。
【研究目標】
研究では、無花粉スギの育種母材をDNAマーカーで早期に作出する技術と無花粉スギ苗の大量生産システムを構築する。
【研究の内容と実施体制】
- 中課題1:スギゲノム情報を用いた雄性不稔遺伝子の単離
スギのゲノム概要配列を構築し、スギ雄性不稔遺伝子の絞込みを行う。
((研)森林総合研究所樹木分子遺伝研究領域、東京大学大学院新領域創成科学研究科) - 中課題2:DNAマーカー育種技術の確立
どのような集団、家系でも雄性不稔遺伝子を保有する個体を選抜できるDNAマーカーを開発し、DNAマーカー育種技術を確立する。
(新潟大学大学院自然科学研究科、新潟県森林研究所) - 中課題3:組織培養による無花粉スギの大量苗木生産法の開発
組織培養による無花粉スギの大量苗木生産法を開発し、無花粉スギ苗の安定供給に貢献する。
((研)森林総合研究所樹木分子遺伝研究領域、株式会社キリン)
【期待される効果・貢献】
本研究で行う技術開発は、農林水産研究基本計画の「成長に優れた優良種苗を短期間で作出する技術の開発」と合致し、林野庁が森林・林業基本計画に掲げる「花粉発生源対策」を推進する。
【参考ホームページ】
http://www.s.affrc.go.jp/docs/research_fund/2016/hatten_yuugou_2016/attach/pdf/h28hatten-5.pdf