心の病気の科学

2011年03月31日超域学術院プロジェクト

 年次報告書研究報告書

 我々の「心」の宿る組織、「脳」の機能メカニズムを探ることは、今世紀最大の科学研究テーマのひとつでもある。分子生物学もゲノム科学も脳画像技術も着実な進歩をとげ、近年そのゴールまでの距離が急速に短くなった。特にヒトにおける情動(感情、気分、意欲)などといった精神、つまり「心」の領域に属するものは、近代まで全く「科学」の対象から外されていた。しかし最新の脳科学やゲノム科学の発展から、神経伝達(情報)や神経機能分子と高次脳機能(精神)との関連が明らかになり、徐々にではあるが遺伝子や分子の視点から脳を理解できるようになってきている。本プロジェクトは、脳研究所を始めとする本学の神経研究の英知を集結して、統合失調症に代表される「心の病気」つまり精神疾患の生物学的理解と病態解明を目ざすものである。これにより、ヒトの心をより科学的に理解し、現代社会に蔓延する「心の病」の診断法や治療法の手がかりを得ようとするものである。