一次元新奇超伝導物質の創製と多重極限下での物性研究

2011年03月31日超域学術院プロジェクト

研究成果報告書

プロジェクトの目的、学術的な特色および期待される成果

一次元伝導機構における強相関電子系の研究は、取り扱いの明快さから物性理論分野で数多くの研究がなされ、超伝導現象発現も予言されている興味深い研究テーマであった。しかしながら現実の物質でこの一次元伝導機構により超伝導が確認された例はなく、実験的には証明不可能と考えられていた。最近、研究プロジェクト代表者である山田はプラセオ系銅酸化物において、一次元伝導面を有する新奇超伝導物質を発見、世界的に注目を集めている。さらに平成16年超伝導国際会議(ISS2004)においてこの発見に関して招待講演を行っている。現在この超伝導現象の起源を明らかにすることが新しい低次元物理確立のための最重要課題となっている。また、この超伝導機構解明には、多重極限下での物性測定が有効である。山田グループは超高圧下での物性研究でも大きな成果を挙げており、新潟大学物性測定グループと連携することにより超高圧・強磁場・極低温の多重極限下での物性測定が可能となり、世界的にも数少ないユニークな物性測定拠点が形成される。 
本研究プロジェクトは一次元問題の世界的な専門家である新潟大学物性理論グループと世界有数の多重極限環境下測定技術を持つ新潟大学物性測定グループが有機的に連携し、一次元伝導超伝導体の機構解明を行い、さらなる新奇超伝導物質探査を推し進め、将来の室温超伝導物質発見につながる新しい物性概念の確立を目指した大変ユニークな研究プロジェクトである。

研究計画

  1. 高圧酸素雰囲気炉を用いたフラックス法による一次元新奇超伝導物質の単結晶の育成を試みる。この課程において良質な多結晶物質の合成条件も探査する。
  2. 10 GPa級圧力セルの開発を行う。このセル完成後、新奇超伝導物質の圧力効果を電気抵抗による測定する。
  3. 従来の強相関電子系一次元伝導理論と一次元新奇超伝導物質の実験結果を比較検討しその超伝導発現機構解明へ指針を得る。
    上記、世界最先端の研究、特に多重極限下での測定技術及び新奇量子相転移物質の合成に取り組むことにより将来の物性研究を担う若手研究者の育成も行う。