意識の脳科学(2013.10.1~2018.9.30)

2016年09月30日超域学術院プロジェクト

脳が心を生み出す機序の解明を目的に中核的研究拠点(COE)として確立された新潟大学脳研究所統合脳機能研究センターは、ヒトの高次脳機能、特に意識の形成に水分子が積極的に関与することを突き止めた。連携融合事業として引き継がれたこのプロジェクトは、脳における水分子の微細活動を可視化する超高解像度分子画像と水分子の移動を制御するアクアポリン-4(AQP4)の活動を画像化する分子画像とを確立することに成功した。本事業は世界に先駆けて獲得されたこの脳機能解析の最終兵器を用いて、ヒトの心を司る脳機構の直接解明を実践する、研究・教育の国際的拠点形成である。
プロジェクトは平成26年度までにヒト生体脳における水チャンネルAQP4分布の画像化に世界で初めて成功した。この技術は、水分子の移動に特異的に関与するAQP4の生理学的動態解析のみならずAQP4が関与する疾患群の検査・治療に役立つ方法であり、日本および米国での特許を取得している。また、この手法は世界をリードする技術として国際的に高い評価を受け、現在、海外の研究機関との共同研究が行われている。さらに我々はこれらの研究から生まれた脳内の水分子動態を可視化する測定法をヒトに応用したアルツハイマー病早期診断のMR、PETによる評価法を開発した。この手法を一般化することにより、アルツハイマー病の早期予防が可能となる可能性を開いた。 

↑図1. (a) AQP-4特異的リガンドであるTGN020を用いたマウス脳のオートラジオグラフィー(ARG)。
AQP4をノックアウトした遺伝子改変マウス脳(AQP4(-/-))では集積が認められない。
(b) TGN020 PETを用いた正常成人脳におけるAQP-4の分布。

↑図2. (a) センターで開発されたH217O JJVCPE-MRI法による、マウスの脳における髄液産生量の変化。
AQP4ノックアウトマウス(AQP4(-/-))およびアルツハイマー病モデルマウス(APP-PS1)では
年齢をマッチした正常マウスと比較して、脳室中への髄液の流れ込みが低下している。
(b)マウスで開発されたMRI測定法をH215O PETに応用し、ヒトアルツハイマー病(AD)に於いても、
脳室中への髄液の流れ込みが低下していることを証明した。
この手法を応用することにより、アルツハイマー病の超早期診断法を確立できる可能性がある。

■中間報告書

研究期間 平成25年10月1日?平成28年9月30日