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異分野連携を介した内耳特殊体液の物性の生理的意義の解明(2012.12.1~2017.11.30)

2017年11月30日超域学術院プロジェクト

難聴患者は我が国で1千万人を数え、その主たる障害部位は内耳蝸牛である。難聴の克服を目指し、本課題では、蝸牛の体液「内リンパ液」の基礎的研究を異分野連携体制で行う。難聴・めまいを示すメニエール病では内リンパ液の過剰が認められることからも、この体液の重要性が予想される。蝸牛に入った音は、最初に基底板を上下動させる(図)。それに呼応して、基底板上の有毛細胞が振動し、電気興奮する(図)。電気信号は脳へ伝わる。基底板や有毛細胞の振動幅は、最大でも10 nm以下である。両者が面する内リンパ液は、高分子ヒアルロン酸を含むため、比較的高い粘性を示すと指摘されている。この物性は、基底板や有毛細胞層の振動様式に深く関わると考えられている。また、ヒアルロン酸は、陽イオンや細胞膜蛋白質との結合により構造が修飾され、物性や保水量が大きく変わる。これらの特徴は、基底板や有毛細胞層の動態に大きく影響すると考えられるが、その視点からの研究は全くない。
 そこで本課題では、工学研究者と連携し、微量な体液の粘性の測定法や、光を用いた微小振動計測装置を開発し、上記の特徴に着目して、内リンパ液の物性の調節機構と聴覚機能との共役関係を理解する。最終的に、一部の難聴が内リンパ液の物性の破綻に依るとの仮説を立て、疾患モデル動物の作製に着手する。