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チンギス・ハンの実像と現代的意義の研究(2012.12.1~2017.11.30)

2017年11月30日超域学術院プロジェクト

13世紀にユーラシア大陸を席巻したモンゴル帝国。その国の成り立ちには不明な点が多い。とくに始祖チンギス・ハンについては多言語で書かれた膨大な史料が残るが、毀誉褒貶が激しく、また、伝説的な内容も多いことがこれまで研究の進展を妨げてきた。そこで私たちは、限られた史料からはうかがい知れない興亡の真相を物証を用いて復元しようと考えた。具体的には、考古学調査と古環境復元の文理融合型の手法を用いて実証的解明を目指している。東西世界を結びつけグローバル化のさきがけと評されるチンギス・ハンの事績を、グローバル化の弊害が叫ばれる今日、正確にトレースして評価する作業は意義あることだと考える。

 また、チンギス・ハンが現代のモンゴル人にとって信仰対象になっていることにも注目する。地下資源が豊富で地政学的にも重要なモンゴルと日本との結びつきは年々強まっている。モンゴル理解のためにも、モンゴル人の彼に対する考えの把握は必須である。近代史や社会学的アプローチも並行しておこなっている。本プロジェクトは単なる過去の人物研究にとどまらず、未来の日本とモンゴルの交流促進をも見据えている社会還元型の取り組みでもある。

 本プロジェクトの直近2カ年の成果とし、以下のことが特筆できる。まず、プロジェクトの成果の一端をまとめたものとして、平成27年9月に『チンギス・カンとその時代』(勉誠出版)を刊行した。産経新聞全国版に書評が載るなど、学界だけでなく一般からも注目されている。また、マスコミを通じて研究成果を広く一般にわかりやすく紹介する取り組みもおこなっており、NHKBSの2つの番組で特集、読売新聞全国版でも特集記事が2回掲載された。さらに、プロジェクトメンバーが中心となって日本モンゴル学会平成27年度春季新潟大会を成功させるなど、学界の発展のためにも貢献した。最後に、プロジェクト代表の白石にはモンゴル科学アカデミーから名誉博士号と新潟日報社から第67回新潟日報文化賞がそれぞれ贈られた。これは本プロジェクトに対する期待の大きさの表れと考え、学界のみならず社会にも貢献できるように、メンバー一同さらに切磋琢磨していきたいと考えている。

■中間報告

研究期間 平成24年12月1日〜平成29年11月30日