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ステロイドに頼らない膠原病の画期的治療法開発-免疫寛容誘導を目的とする液性・細胞性免疫制御の研究-

2011年03月31日超域学術院プロジェクト

1.研究プロジェクトの特色(PRすべき項目)

免疫学の長足の進歩と自己抗体を初めとする自己免疫に関する知見の集積にも関わらず、膠原病や喘息にはいまだに副腎皮質ステロイドが多用されているのが現状である。しかし、喘息100万人、関節リウマチ(RA)約30万人、全身性エリテマトーデス約5万人などの多くの患者の中にはステロイド抵抗性の難治性病態が存在するほか、治療薬の副作用として易感染性、骨粗鬆症などの問題もあり長期的予後は必ずしも満足のいくものではない。本研究は抗サイトカイン抗体を用いて破れた自己免疫寛容を再誘導し、副腎皮質ステロイド、免疫抑制剤を必要としない理想的治療法を開発することを目的とする。
本研究の目的は以下の点からなる。

  1. 気管支上皮細胞はGM-CSFを産生しているが、同細胞に対する機能はよく知られていない。また、ディーゼル粒子吸入喘息モデルマウスに予め抗GM-CSF抗体を投与しておくと、喘息発作が抑制されることが知られている。そこで、in vitroの気管支上皮培養系を用いて上皮からのケモカイン分泌を指標として抗GM-CSF自己抗体の効果を調べる。
  2. すでに特発性肺胞蛋白症の末梢血から抗GM-CSF抗体産生細胞を検出することに成功しているが、他の抗サイトカイン抗体のヒト型モノクロを作製する。
  3. 抗サイトカイン自己抗体によるサイトカイン中和能を無細胞系で検出する系の開発を行う。
  4. 特発性肺胞蛋白症では抗GM-CSF自己抗体産生制御機構が破綻していると考えられるので、その機序を解明するために患者末梢血単核球の自己抗体産生系を開発し、その産生機序を解明する。

2.これまでの研究実績との関連

申請者は、1999年に抗GM-CSF抗体が特発性肺胞蛋白症の病因物質であることを突き止めるとともに、健常者においてもIFNg, TNFa, IL-10, IL-6などに対する抗サイトカイン抗体が存在することを発見し免疫のホメオスタシスに関わっていることを示すと共に、この定量系も開発した。また、平成17年度より、抗サイトカイン自己抗体の生理学的意義に関する研究を肺胞蛋白症などの病態研究やin vitroにおける抗サイトカイン自己抗体の免疫制御作用の研究を進めてきたが、健常者の末梢血中に抗サイトカイン自己抗体を産生するB細胞クローンが存在し、その検出方法を開発したので、さらなる研究の発展が望めると考え、平成20年に3年間の延長を願い出た。平成17年度に北大イーベック(株)との共同研究で、特発性肺胞蛋白症患者末梢血より、抗GM-CSF自己抗体産生クローンを樹立し、ヒト型単クローン抗体を遺伝子工学的に作製した。それにより、vitroにおける免疫制御機構の解明が進んだ。さらに、平成20年10月にイーベック社は製薬大手企業のべーリンガーインゲルハイム社と契約し、申請者と共同開発した人工抗サイトカイン自己抗体を医薬開発することとなった。

細胞プロセシングルーム(1)

細胞プロセシングルーム(2)