• ホーム >
  • ニュース >
  • 機能分子解析に基づく代謝性腎疾患のトランスレーショナル・リサーチ

機能分子解析に基づく代謝性腎疾患のトランスレーショナル・リサーチ

2011年03月31日超域学術院プロジェクト

報告書  01

 私たちは平成15年度、ワクチン・検査試薬開発メーカーであるデンカ生研株式会社の寄附により、新潟大学では初めての寄附講座として「機能分子医学寄附講座」を設立した。このような産学連携体制により、さまざまな生体機能分子の基礎解析を、疾病の診断や治療の臨床に応用するためのトランスレーショナルリサーチを行う基盤を確立した。
そのような体制を基として開始した本プロジェクトは、具体的な目的として、長年私たちが研究に取り組んできた腎近位尿細管上皮細胞の蛋白代謝に関わる機能分子メガリンや、腎糸球体上皮細胞に発現するポドカリキシンの基礎解析を発展させるとともに、それらの生体機能分子のヒト尿中における測定系を開発し、糖尿病性腎症や慢性糸球体腎炎などの慢性腎臓病患者の予後予測や病態モニタリングの新しいバイオマーカーとして臨床に応用することを目指している。腎臓の機能は糸球体・血管系と尿細管系の両面の機能の相互作用に関連しており、慢性腎臓病の進展においてもその両面の機能のモニタリングが重要である。しかし現在臨床的に糸球体・血管系と尿細管系の両面の機能や病態の活動性を、それらの部位特異的に発現する機能分子を用いて簡便に評価するバイオマーカーは確立されていない。私たちが開発を目指している尿中メガリン・ポドカリキシンアッセイ系は、まさにそのような臨床的ニーズに応えるものであり、それにより我が国でも現在1330万人存在する慢性腎臓病患者が腎不全になり透析療法に導入されることを阻止する一助となることが期待される。
さらにそのような機能分子の基礎研究は、それらの分子を標的とした新しい治療法の開発に役立つ。たとえばメガリンは近位尿細管上皮細胞において病的シグナル伝達に関わることから、その機序を解明することにより新たな治療薬の開発に結びつけることが期待される。