新潟大学超域朱鷺プロジェクト(2008.12.16~2014.12.15)

2014年12月15日超域学術院プロジェクト

1.研究プロジェクトの特色(PRすべき項目)

トキの試験放鳥により、生物多様性の保全、そのための里地里山の再生、循環型地域社会の構築をキーワードとして進められてきたトキの野生復帰は、地道で継続的な取り組みに向けた本格的なスタートをきった。野生絶滅したトキを野生復帰させるということは、トキが生息できる里地里山の半自然生態系の機能を、生物多様性保全の視点から永続的に維持管理し、保障することを意味する。さらに、トキの野生復帰は、人間活動の変化により、多くの絶滅危惧種が生育・生息する日本の里地里山の再生モデルを世に問う意味合いを強く持っている。そのため、佐渡島における循環型社会の構築は、里地里山が分布する中山間地の今後のあり方を見定める試金石となる。このような状況のもと、新潟大学は、地域基幹大学としてトキが野生復帰し、自立して生息できる自然・社会環境づくりを将来的に支援していくことを、地域住民、あるいは佐渡市・新潟県などの地方行政組織から、強く期待されている。そこで、本プロジェクトは、トキをシンボルとして、自然再生とそれを受け入れる地域社会創りの具体的なシナリオを「佐渡モデル」として世界に発信することを目的とする。合わせて、それを達成し得る学内教育研究組織の基盤整備を行う。

2.これまでの研究実績との関連

トキの野生復帰に向けた本学教員の取り組みとして、現在、新潟大学農学部附属フィールド科学教育研究センターが主体となるトキプロジェクトと、学外研究機関との連携プロジェクト(環境省地球環境研究総合推進費「トキの島再生プロジェクト」)のふたつのプロジェクトがある。前者のトキプロジェクトでは、主に、試験放鳥の地理的核となる旧新穂村キセン城に放棄されていた約100枚の棚田(30ha)を再生整備し、トキの採餌環境創出を図るとともに、餌生物を持続的に産生するビオトープ管理手法を検討、確立した。後者の環境省トキの島再生プロジェクトでは、エサ場となる水田や河川環境、あるいは営巣環境となる森林環境などの基盤情報をGISでデータベース化した上で、当該プロジェクトで構築されたトキの好適生息環境予測モデルと餌量推定モデルをもとに、佐渡島全域にわたる景観レベルでの自然再生プログラムを立案した。今回申請する超域朱鷺プロジェクトでは、これらふたつのプロジェクトを融合し、より強力な研究体制を構築することを目指す。