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田園都市における生物多様性回復のためのネットワーク形成

2011年03月31日超域学術院プロジェクト

報告書  01

 広大な新潟平野の中核を占める田園型政令都市新潟は、都市周辺部に隣接する広大な水田、湿地、海岸林、里山などに多くの問題を抱えている。なかでも全水田の3割を占める減反水田の管理は、農地管理、生物多様性回復、さらには、都市計画の観点からも大きな課題となっている。本プロジェクトは、地域貢献型プロジェクトとして、新潟市と連携してこれらの課題に取り組み、田園型都市の生物多様性回復と景観形成に貢献する。
そのために、田園景観に配慮した生態系の再生を目的として、1)河川・水路・水田・里山の間で生物が移動可能な連続性のある生態系のネットワークを構築し、2)休耕田に湿地を再生して豊かな生物相を復元することによって、3)環境と生物多様性の保全に配慮した田園型政令都市の実現を目指す。
この目的を達成するために、本プロジェクトは5班構成とし、各班が定める目標を統合化することによって、プロジェクト全体の目的を達成させる仕組みとする。生物多様性班は農林地・水路 ・河川敷等に生息する野生動植物の多様性解明と保全のための提言、生態系機能班は生態系ネットワークの機能と構造の解明、景観解析班は高分解能の衛星画像解析にもとづいた農林地理情報システムの構築、地域計画班は環境に配慮した農地農村管理の経済的側面からの検討、農業施設班は農地水利システムの分断緩和とネットワーク化に必要な技術的検討を行う。
各班で得られた成果は関連の学会誌や国際誌に順次投稿し、科学的根拠を明確にしていく。そして、生態系に配慮した景観再生を目指して、新潟市・土地改良区・農家・市民のネットワークを組み上げる。復元された再生湿地では、生き物を探す子供達が遊び、様々な水鳥が都市周辺を群れ飛ぶであろう。都市における大規模な自然復元は、世界でも希な試みである。本プロジェクトは、田園型都市における新たな土地利用のあり方に関する提言のみならず、政令市新潟の景観イメージ形成にも貢献する。

丸潟新田再生湿地:超域研究機構の再生湿地プロジェクトが新潟市丸潟新田に再生した湿地。絶滅危惧植物のミズアオイが復活し、排水路との間に設置した魚道から淡水魚が遡上して多数の稚魚が誕生。写真中央左のガマの茂みに水鳥のバンが営巣して孵化するなど着実に自然再生が進んでいる。

大原再生湿地観察会:超域研究機構の再生湿地プロジェクトが新潟市大原に再生した湿地。プロジェクトに関わる特別研究員や学生・院生が中心となって、地元の小中学生と保護者を対象に湿地の生き物観察会が毎年開催されている。