地域発イノベーション創出プロジェクト

2013年09月30日超域学術院プロジェクト

年次報告書

 当グループは、社会貢献研究部門における「地場産業技術融合型先端医療産業クラスター構築」プロジェクトを平成15年の超域研究機構創設と共にスタートさせた。先端的な研究開発のみが目的ではなく、研究成果を新産業創出を含む地域産業の活性化に役立てることも目的であった。そこでの特徴は、全国の大学に先駆け、20年前に本学でスタートした本格的な医工連携を基盤として生まれた知的資源を、研磨や単品製造での高い技術等で知られる地場産業技術と融合させて高付加価値製品を製造販売する医療産業群の育成創出を目指した点にある。ピンセットや手術用メス、ハサミ等を除けば医療製品の製造を考えもしない製造業が圧倒的に多く、地場企業自身も気づかずにいた隠れた高度の技術を大学の先端研究シーズに結びつけ、大企業が決して手を出さないが、高付加価値で需要数が多い医療用インスツルメンツ、デバイス、計測診断装置等の製品化を目指す点にアイディア性と独創性を有し、地域産業のブランド化に貢献することを常に指向してきた。
クラスター構築の前提となる医療産業創出のプラットホーム構築をほぼ終えた時点で、地域社会の状況が大きく変わり、毎年6千人の人口流出に伴う厳しい人口減少状態と若手人材の枯渇、財政基盤も産業基盤も弱く、近隣地域との激しい対岸貿易競争、落ち込みの激しい観光産業、積年の人材と技術力の不足による中小企業の衰退、後継者不足が深刻な農業等、正に”限界市町村”に向かいつつある現状を鑑み、教育研究を通した人材輩出と知の創造に邁進する大学が、正に今こそ地域社会の活性化に貢献し、イノベーションによる持続的な新しい流れを作り出す必要を感じて、新たに「地域発イノベーション創出プロジェクト」を平成19年10月1日から再構築してスタートさせた。即ち、ここでの目的は、地域社会の活性化に直結するエンジンとなる産業の育成、地域企業での雇用の創出・維持のための新製品・新技術開発の支援、研究成果に基づく新たな技術シーズの活用は勿論のこと、地域でのイノベーション創出を担うための若手中核人材の育成である。特に、独創的な点は、①企業規模が小さくても自立・継続型でブランド製品を狙う企業の支援、②地域産業のイノベーション創出に関わる他地域・組織との広域連携活動の推進・展開、③地域でのイノベーション創出中核人材育成に関する活動推進 である。即ち、大学の中で常に地域社会の活性化を真剣に考え、同時にポスドクの”高学歴ワーキングプア”からの脱出策の一つとして地域(新潟に限らず全国を対象)イノベーション若手中核人材として活躍の場を提供可能とする点も他には余り見られず、大学院の後期課程の活性化に直結する点にも独創性を有する。
シーズ創出研究では、ナノ・デジタルメディシン研究を幅広く展開する。即ち、医工連携研究にも医学的なエビデンスを求めるメガトライアル(大規模な臨床調査)により、従来基礎研究で良いと思われた医療効果の検証から効果を否定する結果が次々に明示され、実験生物学で得られた知見のみでは、 複雑系生体の理解が困難である。従って、人材育成、医療系分野では、技術的および経営的問題に対する新たな教育が必要となり、生命情報のデジタル化(主としてコンピューターモデリング)を導入し、 多次元(生化学、 電気、 機械等)および多階層(遺伝子、 分子、 細胞、 組織、 個体)を考慮したシステムの再構築と高度シミュレーション技術の修得を研究目的に加えて独創性を持たせたプロジェクトを実施し、研究活動の飛躍的進展、知的財産の獲得、社会貢献を目指す。