水分子の脳科学脳研究所

2013年09月30日超域学術院プロジェクト
年次報告書0102

本プロジェクトは、Super COE 助成により確立された統合脳機能研究センターの施設をベースとし、水分子の動態がもたらす脳高次機能への直接的な作用を、統合的、かつ、学際的に検証することを目的としている。プロジェクトは様々サブプロジェクトより構成されるが、大別して、三つのカテゴリーに纏めることができる。つまりは(1)脳の水チャンネルである aquaporin-4(AQP-4)の生理機能解明、(2)水分子の微細画像可能とするMR microscopy の確立、そして(3)ヒト脳における AQP-4 マッピングを可能とするヒト用AQP-4 PET法の確立である。(1)は分子生物学、神経生理学的手法を用いた動物実験を中心としたプロジェクトであり、(2)は本邦唯一のヒト用 7T MRI 装置を中心とした技術開発、(3)はPET施設を中心とした技術開発である。

コンピューター・シミュレーションによる水がAQP4を通過する様子の三次元表示
リボンで示している部分がAQP4で、その内部にある水分子が空間充填モデルで示されている。

AQP4モノマーにinhibitorであるアセタゾラミドが結合している様子
アセタゾラミドは空間充填モデルで、AQP4は水色のリボンで表示している。

ヒト用7T装置を用いたアルツハイマー病のMR microscopy
左側の生きている症例より撮像されたMR microscopy画像では、右側の病理標本の老人班に対応して低信号を呈する領域(矢頭)が明確に描出されている。

薬剤によるAQP4水透過の抑制
AQP4を発現させたアフリカツメガエルの卵母細胞が、低浸透圧溶液中で膨張していくのを、アセタゾラミドが抑制する。アセタゾラミドはAQP4による水透過を濃度依存的に抑制する。