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日髙昭秀特任准教授が日本原子力学会「JNST Most Popular Article Award 2024」を受賞しました

2025年09月16日原子力規制人材育成事業研究成果

研究統括機構の日髙昭秀特任准教授が日本原子力学会「The Journal of Nuclear Science and Technology Most Popular Article Award 2024」を受賞しました。

「The Journal of Nuclear Science and Technology Most Popular Article Award」は、日本原子力学会の英文論文誌『Journal of Nuclear Science and Technology (JNST)』に掲載された論文の中で、読者からの注目度が高い論文(ダウンロード数の多い論文)を表彰する賞です。出版社であるTaylor & Francis社の支援のもと、JNSTの評価向上に貢献した論文を顕彰することを目的としています。

★JNST Most Popular Article Award 2024 特集ページは こちら

 

受賞論文    
Radio-tellurium released into the environment during the complete oxidation of fuel cladding, containment venting and reactor building failure of the Fukushima accident
福島第一原発事故時の燃料被覆管の完全酸化、格納容器ベント及び原子炉建屋破損の時間帯に環境中に放出された放射性テルル
日高 昭秀1); 川島 茂人2); 梶野 瑞王3)
   1)  新潟大学、カリファ大学、日本原子力研究開発機構
   2) 
京都大学、同志社大学
   3) 
気象研究所
https://doi.org/10.1080/00223131.2022.2142311

 

研究概要
福島第一原発事故時に環境中に放出された放射性物質の時間帯や量(ソースターム)の推定は、原子炉の事故進展や環境影響の評価にとって不可欠である。そこで、129mTeについて、事故後の最終的な土壌汚染分布とメソスケール気象モデルの組合せにより、陸風時でも海岸線に沿った面的な僅かな線量上昇からソースタームを逆推定する、「仮想放出回帰推定法」を用いて検討した。前回の検討では、この手法の適用性確認に主眼を置き、発生源について暫定的な結果を得ることができた。しかし、その後の検討で、放出があったと思われる期間の一部が放出推定期間から欠落していると、ソースターム計算全体に歪みが生じることが判明した。このため、本研究では、推定期間を延長し、主要な放出を全て含むように再計算を行った。その結果、これまで特定されなかった時間帯における放出事象が明らかになり、炉内事象との対応も確認できた。また、炉心注水時のZr被覆管完全酸化による129mTe放出事象を考慮することにより、土壌汚染マップにおける129mTe/137Cs比の地域依存性を説明することができた。さらに、本検討に基づき、WSPEEDI逆算では陸風のために予測できなかった2011年3月11日夜、13日、14日早朝にヨウ素とCsの放出が増加した可能性を指摘した。

 

日髙昭秀特任准教授のコメント
本論文の受賞理由は、京都大学の故高橋千太郎先生の、花粉の飛散予測に実績のある「仮想放出回帰推定法」と、ほとんどの放出が事故初期に起きるTeの特性とを組合せるという着想が優れていたためと考えます。高橋先生は、2016年頃、事故時のプラント内放射性物質挙動に係る研究者を広く探されていて、JAEAの私の元上司で、京都大学に移籍された杉本純先生の仲介もあって、当時、JAEAに所属していた私がお手伝いをすることになりました。この研究でのポイントは、「仮想放出回帰推定法」を開発された川島先生の深い洞察と、緻密かつ膨大な計算だと考えています。1ケース、1月近く掛かる計算を、川島先生はお一人で黙々と何度も実施されました。また、梶野さんは、お忙しい中、川島先生が要求されるフォーマットで3月11日~3月16日のメソスケール気象計算結果を快く提供下さいました。それにしても、川島先生とは、何百回とメールをやり取りし、時には失礼なメールをお出ししたこともありましたが、まだ一度もお会いしたことがありません。いつか直接お会いして改めてご挨拶させていただきたいと思っています。